機械式時計のしくみを、動くムーブメントで学ぶ
クラシックな 16.5 リーニュ手巻き構造で組んだ教育用オリジナルモデル「watchbase Cal.1」。ゼンマイの力が歯車の列を伝わり、脱進機で一定のリズムに刻まれて、針の動きになる。この後の章で、動力の入口から時間の出口まで順にたどる。
動力源は香箱の中の主ゼンマイただ1つ。リューズを回すと、巻真 → キチ車 → 丸穴車 → 角穴車と伝わってゼンマイが香箱真に巻き付く。コハゼが角穴車の歯に掛かり、巻いた力の逆戻りを防ぐ(巻くときのカチカチという音の正体)。ほどけようとするゼンマイがドラムを回し、輪列を駆動する。
香箱(1回転 約6.7時間)→ 二番車(1時間)→ 三番車 → 四番車(1分)と、噛み合うたびに回転が速くなる。二番車から四番車までの増速比はちょうど 60:1 — これがそのまま「分針と秒針の比」になる。歯数(80/12・80/10・75/10・80/8)は伝統的な標準設計に基づき、時計として数学的に正しく時を刻む。
ゼンマイの力は放っておけば一気にほどけてしまう。それを堰き止め、少しずつ放流するのが脱進機。ガンギ車はルビーの爪石に止められては放たれ、1振動(0.2秒)ごとに半歯ずつ進む。スローで見ると「ロック(静止)→ 解錠(僅かに後退)→ 跳躍 → 次の爪石に激突して静止」のサイクルが分かる。
てんわとヒゲゼンマイの組が、毎秒 2.5 往復(18,000 振動/時)の等時性振動を生む。振れ幅が多少変わっても周期がほぼ一定 — この性質が機械式時計の精度の源泉。ヒゲゼンマイは内端がてんわと共に回り、外端は固定。呼吸するように巻き締まりと緩みを繰り返す。
裏側(文字盤側)。二番車の軸に摩擦で嵌まった筒カナが分針を回し、日の裏車で 12:1 に減速された筒車が時針を回す。摩擦嵌めのおかげで、時刻合わせのときは針だけを滑らせて動かせる。小秒針は四番車に直結 — 0.2 秒ごとに刻むあの動きは、脱進機のリズムがそのまま見えている。
時計は下から順に組み上がる。地板に穴石を打ち、香箱と輪列を立て、受けとネジで挟み、脱進機とてんぷを載せ、自動巻きを重ね、裏返して文字盤と針、最後にケースへ収める。スライダーを動かすと、その道のりを自由に行き来できる。分解の途中でもムーブメントは時を刻み続ける — 部品それぞれの役割がいちばんよく見える瞬間だ。
機械式時計のしくみを、動くムーブメントで学ぶ